福岡県の文化財保護行政

文化財保護の組織

福岡県では、昭和30年4月に「福岡県文化財保護条例」が制定され、文化財の保護の仕組みが整備されました。この条例に基づき、県内の文化財を保護する取組が行われています。
現在、本県の文化財主管課として、教育庁教育総務部に文化財保護課が設置されており、県内の各種文化財に係る施策、調査・指定、補助事業を主な職務として、市町村支援を行っています。また、文化財保護課所管施設の九州歴史資料館は、博物館機能と埋蔵文化財センターを併せ持つ本県の文化財保護行政の拠点施設として位置付けられています。各種文化財の調査と展示公開、教育普及、保存科学、大宰府史跡の発掘調査と研究、県内埋蔵文化財の発掘調査を行っています。このほかにも、福岡県立アジア文化交流センターや世界遺産室にも文化財専門職員が配置されており、九州国立博物館の運営や、県内の世界文化遺産の保存・活用を行っています。
そして、本県では、県内に存在する各種文化財の保護の充実を図るため、建造物、絵画、彫刻、工芸品、文献(古代、中世、近世、近代)、民俗、史跡、名勝、整備、埋蔵文化財などの諸分野の専門職員を文化財保護課・九州歴史資料館等に配置しています。

地域に根差した文化財保護行政

文化財は、所在する地域に密着して育まれてきた歴史があり、その地域において保護・継承・発展させていく必要があります。そのため、本県では「地域の文化財は地域で守る」の基本理念のもと、広域的視点で文化財に関わる県と、地域に密接に関わる市町村が、それぞれ役割を分担しながら連携して様々な取組を行っています。さらに、九州歴史資料館では、各種文化財の調査を継続的に実施しており、県内の各地域や市町村の要請に応じた基礎調査によって、新たな地域の文化財を見出す機会となっています。
これまでの取組によって、県内に文化財専門職員が274人(うち市町村文化財専門職員が233人)配置されています。また、県内60市町村のうち51市町村に博物館・資料館等が設置されており、多くは当該域内の歴史文化に関係する資料を展示しています。さらに、県内全ての市町村において文化財の保護に関する条例が制定されています。

文化財保護の施策

本県では、福岡県文化財保護条例に基づき、諮問機関である福岡県文化財保護審議会において、文化財の指定をはじめ、保存と活用に関する重要事項について、調査、審議を行い、県内文化財の保護を図っています。
平成22年2月、福岡県教育委員会は、文化財を取り巻く社会状況の変化から、これからの時代に適合した新たな文化財保護の指針として、「福岡県文化財保護基本指針」を策定しました。本県の文化財保護の方向性や、地域の文化財の保護を担う市町村との連携の在り方などを示し、今日までこの指針に基づいて文化財保護行政を推進しています。
さらに、令和元年7月、福岡県教育委員会は、福岡県文化財保護審議会に対して、「福岡県におけるこれからの文化財保護行政の在り方について」(諮問)し、現在、文化財保護審議会において、本県の文化財保護行政の在り方について検討がおこなわれています。

福岡県の組織体制

埋蔵文化財

発掘調査風景(朝倉市)

発掘調査風景(朝倉市)

埋蔵文化財は、土地に埋蔵されている文化財で、貝塚や古墳、都城跡、城跡等の遺跡(不動産)と、土器や石器、金属器などの遺物(動産)が含まれています。現在、福岡県下には、約24,000件の遺跡(周知の埋蔵文化財包蔵地)が存在しています。本県は、3つの異なる海に面しながら、平野や河川、山地等の地勢的特徴があり、また、政治や経済などの社会背景による街の形成など、地域性がみられます。
本県には、大宰府や博多、近世の城下など、我が国の歴史を語る上でも重要な、施設や都市が存在し、各時代を通じて遺跡の内容の豊富さや数の多さにつながっています。また、弥生時代や古墳時代には、大陸、半島に関係する遺構や遺物が質量共に目立っており、本県の地理的重要性を示しています。さらに、装飾古墳や修験道に関する山岳信仰遺跡など歴史的にみても、特徴的な遺跡も認められます。このように、本県の埋蔵文化財については、地域的特徴があり、在り方についても多様なため、それらを踏まえた保護の取組が必要です。
本県では、地域の文化財を担う市町村と連携しながら、地域の埋蔵文化財の保護に取り組んでいます。県庁の文化財保護課で埋蔵文化財の諸手続きに関して取扱い、九州歴史資料館文化財調査室において県内遺跡の発掘調査を担当しています。