呰見大塚古墳は、京都郡みやこ町大字呰見に所在し、京都平野を流れる祓川(はらいがわ)の河岸段丘上に位置する。古墳時代後期後半(6世紀後半)の二重周溝をもつ墳丘径約13m(外周溝外側で約33m)の円墳が確認された。遺体を埋葬する石室内には赤色で三角文や同心円文などが描かれており、京築地域では初めての本格的な壁画系装飾古墳として評価され、令和元年度に福岡県指定史跡となっている。 本件は、当古墳の石室や周溝などから出土した副葬品などの遺物で、装飾大刀、鉄鏃、馬具(ばぐ)、土師器(はじき)、須恵器(すえき)などからなる。既に盗掘を受けていたものの量は豊富で、馬具や耳環(じかん)の数から、少なくとも2回の埋葬が行われたと判断される。 大刀は、柄頭(つかがしら)に鳳凰(ほうおう)の形の飾りがついた「単鳳環頭(たんほうかんとう)大刀」と呼ばれるもので、近畿を中心に分布し、県内では筑前地域を中心に確認されている。土器のうち、装飾付須恵器は、壺部分に巡らされた長い胴部突帯に蓋付壺と猪、鹿、水鳥、人、琴などの小像の両方を配置した、精巧な作りの大型品である。 本件は装飾古墳からの出土品であり、近畿・瀬戸内地域と北部九州との文化交流の結節点となった豊前地域の歴史的特徴を良好に示すとともに、葬送儀礼の様子をうかがうことができる県内でも稀有な文化財である。