本資料は、宗像大社の末社の一つである依岳神社(宗像市田野)に伝わる文明3年(1471)から昭和9年(1934)に至る棟札10枚である。最も古い棟札の年号部分は「□明参天(年ヵ)辛卯貮月十日」と読み取れ、「明」の付く年号で辛卯の年であることから、文明3年(1471)であると考えられる。内容は田野地域を与えられていた「当給人吉家」なる人物が、宗像社の大宮司である「大檀那宗像朝臣氏郷」によって本殿が造営されたことを記録したものである。時の大宮司による本殿造営は、依岳神社が末社の中でも特に深く宗像社と結び付いていたことを示している。また、「大工藤原盛安」は本殿造営を行った人物であり、中世の神社造営を担った工匠の具体像を確認できる興味深い史料でもある。文明3年の棟札は旧筑前国内では最古の棟札であり、中世史料としても価値が高い。さらに、文明3年棟札を参照して書かれたと思われる正保4年(1643)ヵの棟札を始めとして、その後の各時代の棟札(17世紀2枚、18世紀3枚、19世紀1枚、20世紀3枚)も良好に保存されている。本資料は、社殿建替えに伴う代々の棟札がまとまって伝えられた稀有な資料であり、宗像郡田野地域における依岳神社が中世から現代に至るまでどのように変遷したか、どのような人々によって担われてきたか等を物語る一級の資料である。