「平家物語」の諸本のうち「覚一本」と呼ばれるものの一種である。覚一は播磨国書写山の僧侶で、失明して琵琶法師となり、後に検校を授けられた。彼は書写山で習得した声明の曲節や読経の旋律を取り入れて、平家物語全体の詞章・曲調を整え、「一方流」を大成した。その後、門弟間に詞章につい争論が起こることを恐れ、応安4年(1371)に師説を正しく筆録し、弟子定一に譲った。これが「覚一本」である。平家物語諸本のうち重要な位置を占めるが、原本は所在不明で、本書は転写本6本のうちの一つである。